ビットコインETFへの流入増加でも　BTC価格は6万5000ドル突破に苦戦

7月5日以降、米国のビットコイン上場投資信託（ETF）は19億1000万ドルの純流入を見せた。しかし、ビットコイン（BTC）の価格は6万5000ドルを上回るのに苦戦している。

一方、SP 500指数は7月16日に史上最高値を更新し、世界最大の準備資産とされる金は7月17日に歴史的高値で取引された。つまりビットコインのパフォーマンスを阻む要因は伝統的な金融市場とは関係がないことになる。では、具体的に何がこの不調を引き起こしているのか？

ビットコインETFとBTC価格

まずビットコインETFの購入者は税務上の理由や伝統的な金融取引の担保としてその株式を使用するために現物ポジションからシフトした可能性がある。

また、これらのETFの主要保有者には、裁定取引で知られるヘッジファンドが含まれており、価格の上昇ではなく、市場の非効率性から利益を得ることを目指している。例えば、キャッシュ＆キャリートレードでは、ビットコイン先物を売りながら同時に同等の現物ETFポジションを購入する形となる。

Top holders of IBIT and FBTC according to SEC filings. Source: Fintel

SECの提出書類によると、IBITとFBTCの主要保有者には、ミレニアム・マネジメント、ショーンフェルド・ストラテジック・アドバイザーズ、ジェーン・ストリート、HBKインベストメンツ、サスケハナ・インターナショナル、ブレースブリッジ・キャピタルなどがある。

これらの機関投資家が完全にヘッジされたキャッシュ＆キャリーポジションのような単純な取引に従事しているかどうかは確かではない。重要な点は、これらのファンドが典型的な長期保有者ではなく、ビットコインの価値提案を強く信じているわけでもないということだ。

コイングラスのデータによると、シカゴ・マーカンタイル取引所（CME）のビットコイン先物の建玉は、現在102億ドルで、前週から23％増加している。先物契約の買い手には同等のショート売り手が存在するため、多くのヘッジファンドが現在年率11％のプレミアムでビットコイン先物契約から利益を得ようとしていることが示唆されている。

これらの裁定取引に従事するファンドは最終的に先物市場のショートポジションをカバーする必要があるが、現物BTCポジションの売却によって市場への影響は中和される。しかし、他の賢明な機関投資家がビットコインの価格に対して賭けている可能性を排除することはできない。CMEのBTC先物の建玉の増加は、現物ビットコインETFの純流入の影響が限定的であることを部分的に説明している。

米国でのインフレ低下とBTC価格。

より広い視点から見ると、ビットコインの主な魅力は、その独立性と予測可能性にある。これは、中央銀行が失敗した場合、つまり法定通貨の価値が崩壊するか、政府が債務を返済する能力に対する信頼が失われる場合により説得力を持つ。しかし、米国のインフレは低下しており、米国債は値上がりしている。これは、投資家が米連邦準備制度理事会（FRB）の戦略に信頼を置いていることを示している。

US 5-year government bonds yield. Source: TradingView

米国5年物国債の利回りは、7月1日の4.43％から7月17日には4.07％に低下しており、買い手からの需要が高まっていることを示している。投資家はこれらの債券を非常に安全と見なしているか、将来のインフレ低下を予期して低い利回りを受け入れている。

この傾向はビットコインのようなオルタナティブな価値の保存手段にとって不利な状況だが、低金利を促進し、経済を刺激し、株式市場を後押しする可能性がある。

米国経済に対する市場の信頼が高まるにつれ、数学的に決定された供給を持つ独立した交換手段としてのビットコインを支持するナラティブは弱まっていく。短期的には、ポジティブなマクロ経済データはビットコインの価格に悪影響を与える。これは、現物ETFの流入からの強気の市場心理を相殺してしまう。

翻訳・編集　コインテレグラフジャパン

本記事の見識や解釈は著者によるものであり、コインテレグラフの見解を反映するものとは限りません。この記事には投資助言や推奨事項は含まれていません。すべての投資や取引にはリスクが伴い、読者は自身でリサーチを行って決定してください。

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